ous">精巣ガン(性腺外胚細胞腫瘍)治療の軌跡

精巣ガン(性腺外胚細胞腫瘍)治療の軌跡

挫折

胚細胞腫瘍は、生殖細胞から発生します。
生殖器以外から発生するするものに、性腺外胚細胞腫瘍があります。
発生部位は、胸部(縦隔)、腹部(後腹膜、仙骨部)、(松果体、神経下垂体部)などがある。

精巣ガン(胚細胞腫瘍)が精巣以外でできたガンはかなり稀な疾患。
精巣ガン自体が10万人に1人で、性腺外腫瘍はさらにその2~5%程度と言われている。
悪性の病気であり、急速に進行することがあり、早期の治療が必要である。

主治医に聞いた最初の説明であった。

2020/2/27 息子26歳のガン宣告


息子と2人で聞いた診察室を決して忘れない。

病気に関する説明

精巣腫瘍マーカーのAFPが2万以上と異常高値となっていた。
腫瘍の大きさは10cmを超えていた。
肺にも一部転移が認められる。
治療の主体は抗がん剤治治療(BEP療法)を行っていく。
副作用は強く、場合により生命にかかわる副作用が出ることもある。
BEP3コースでも完治しない場合は、別の抗がん剤に切り替えたり、手術を検討したりする。
少なくとも、1年前後は治療に専念する必要がある。

予後が悪いことも告げられていた。

性腺外胚細胞腫瘍の治療(抗がん剤・手術)では精子保存を行った後に抗がん剤治療を行うことが推奨されている。

この病気はかなり悪い病気で、抗がん剤や手術をしても完治できるのは50~70%程度。
初回治療時は腫瘍崩壊や腫瘍出血、腸管穿孔により死に至るような重篤な合併症を起こすことがあるので特に注意が必要である。

主治医が病状説明を書いた用紙を見ながらの説明をして下さっても、聞いたことのないガンの、聞いたことが無い用語の説目では理解が出来なかった。

緊急検査入院

2020/02/27緊急入院をする。

体内に腫瘤が見つかり、診断を確定し、治療方針を決めるために組織を採取して詳しく調べる必要があるため、2日間の短期入院をする。

2/27AFP値 27583.1ng/mL

3/03
別の病院で、妊孕性(にんようせい)温存療法を受けるために受診する。
精子の凍結保存をする。(1年ごとに更新手続きをすることとなる)

妊孕性温存用法とは

例えば...
抗がん剤、放射線照射による精巣障害で長期に渡り、又は永久に精子が作れなくなる可能性 
手術などにより写生機能が失われたり、精子の通り道自体が無くなってしまう可能性がある
このような治療を受ける生殖可能年齢の方(妊娠・出産の適齢期にある方)や、小児期の方に対して
原疾患の治療前に将来お子さんを設けることのできる可能性を残す方法妊孕性温存療法という。
ガン治療前に妊孕性温存療法をすることはとても重要で、「がん治療医はがん治療による不妊のリスクを評価し、患者に情報提供を行うこと」「妊孕性温存の適応、希望のある患者に対しては生殖医療の専門家を紹介すること」を推奨している。
2017年7月、日本でも妊孕性温存に関するガイドラインが刊行されている。

妊孕性温存療法を受けた後、そのまま入院となった。

3/3入院

BEP療法始まる(ブレオマイシン+エトポシド+シスプラチン)

3/4~3/21 【1クール目】

3/4  AFP27472ng/mL     
3/25 AFP12293.7ng/mL

精巣腫瘍(胚細胞腫瘍)の治療ではBEP療法が第一選択です。

 ブレオマイシンは、抗がん性抗生物質の一種で、DNAの合成を阻害したり、DNAを切断します。

 エトポシドはトポイソメラーゼ阻害薬の一種で、DNAの複製を阻害します。

 シスプラチンは白金製剤の一種で、DNAの二重らせんに結合してDNAの複製を阻害します。

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                       21日が1クールのスケジュール(全3クール)


吐き気止め

①イメンドカプセル
②グラニセトロン注 デキサート
③デキサート

抗がん剤

ブレオマイシン
エトポシド
シスプラチン

  

3/25~4/12 【 2クール目】

3/25 AFP12293.7ng/mL

4/01 AFP8041.8ng/mL

4/15 AFP2116.2ng/mL

  

4/15~5/5 【 3クール目】

3/25AFP12293.7ng/mL      

4/15AFP2116.2ng/mL

4/22AFP1062.7ng/mL

5/ 8AFP317.4ng/mL

AFP値は順調に下がってはいるが、正常値には届いていない。

BEP療法の副作用

自覚症症状
  • 発熱
  • 食欲不振・吐き気
  • 口内炎
  • 脱毛(頭髪、まつ毛、眉毛)
  • 色素沈着         
  • 手足のしびれ

検査値

  • 白血球の減少    (感染しやすくなる)
  • 赤血球の減少(貧血)(貧血の症状。転倒に注意)
  • 血小板の減少    (出血しやすい。転倒に注意)
  • 腎機能低下     (顔や手足のむくみ、尿量の減少・でないなどの症状が出ることがある)
  • 肝機能低下     (体がだるい、食欲の低下、皮膚のかゆみ、皮膚や白目が黄色くなる。

5/19AFP155.6ng/mL

まだまだAFP値は高く、手術出来る数値目標に達していなかった


TIP療法に変わると医師より説明を受ける。

TIP療法(パクリタキセル+イホマイド+シスプラチン)

患者の病状を考慮し適切な治療法を選択するが、米国で開発されたBEP療法後の再発に対して有効性が報告された治療がTIP療法です。6~7割で効果があるとされている。

投与法

  • パクリタキセル(タキソール)   
    175mg/体表面積  点滴注射1日目
  • イフォスファミド(イホマイド)  
    1.2/体表面積    点滴注射2.3.4.5.6日目
  • シスプラチン(ランダ)     
     20mg/体表面積   点滴注射2.3.4.5.6日目

TIP療法副作用

骨髄抑制;ほとんどの人に起こる。
稀に起こる;ショック症状(血圧低下)、肝機能障害、急性腎不全、間質性肺炎、心不全、
DIC(血液凝固の異常)、腸管穿孔、胃腸出血、腸閉塞、急性呼吸切迫症候群、急性膵炎、
皮膚粘膜眼症候群、心タンポナーデ、心筋梗塞。

【その他の副作用】
食欲不振(50%以上)、悪心、嘔吐、口内炎、下痢、腹痛、便秘、舌炎、脱毛、肝機能異常、
腎機能異常、しびれ、アレルギー、発赤、皮疹、発熱、浮腫、呼吸機能異常、色素沈着、頭痛
爪変形、意識消失、めまい、聴覚、味覚、視力異常、筋肉痛、関節痛、痙攣、不整脈、血圧低下
血圧上昇、静脈炎、胸痛、全身痛、ほてり

骨髄抑制以外は稀である
アナフィラキシー症状、ショック(血圧低下)、腎不全、アダムス・ストークス症候群、難聴
耳鳴り、聴力低下

【その他の副作用】
悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛、便秘、口内炎、肝機能異常、腎機能異常、呼吸機能異常
精神神経系の異常、しびれ、頭痛、めまい、循環器異常、心電図異常、血圧低下、動悸、倦怠感
発熱、顔面紅潮、疼痛


骨髄抑制(90%以上)
出血性膀胱炎(5%以上)、急性腎不全、意識障害、幻覚、錯乱、間質性肺炎、脳症、肺水腫
心障害、SIADH、急性膵炎、

【その他の副作用】
タンパク尿、悪心、嘔吐、脱毛、倦怠感、肝障害、腎障害、消化管障害、皮膚障害、神経障害
不整脈、発熱

重篤な副作用が出現する危険性があることと、重症化すれば1%未満ではあるが治療関連死の可能性
があることの説明を受けた。

※神奈川県立がんセンター資料より抜粋

TIP療法始まる

5/27~6/1 【1クール目】

5/275/285/295/305/316/ 1
パクリタキセル
5%ブドウ糖液
 🔴                悪性腫瘍の細胞を殺す薬
シスプラチン
生理食塩水
  🔴 🔴 🔴 🔴 🔴悪性腫瘍の細胞を殺す薬
イホマイド
生理食塩水
 🔴 🔴 🔴 🔴 🔴悪性腫瘍の細胞を殺す薬
アプレピタントカプセル
(内服薬)
 ◯ ◯ ◯吐き気止め
グラニセトロンバック
(点滴)
 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯吐き気止め
ウロミテキサン
生理食塩水
 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯出血性膀胱炎を予防する薬
  21日周期で4サイクル予定

                  

5/27AFP100.8ng/mL
6/3AFP68.8ng/mL

6/17~6/22 【2クール目】

6/16AFP54.6ng/mL
6/24AFP34.8ng/mL

2クール目が終わり、AFPの数値が減らなくなった
主治医より手術をし、腫瘍を摘出した方が良いと言われる。

決断する

縦隔に出来た腫瘍(抗がん剤治療前))
縦隔に出来た腫瘍(抗がん剤治療後)

ガン細胞が残っていた場合、手術によってガン細胞が撒き散らされると文献で読んでいたため、
TIP療法を計画通り4クール目まで行った方が安全ではないかと悩んだ。
息子自身が決めるべきだと思った。


息子が出した答えは、「手術をする!」だった。

7月13日手術日が決定した。


説明を聞きに行く。
腫瘍が心臓にまで浸潤していた場合、そのまま閉じて終了となるとの説明を受けて帰ってきた。
腫瘍が巻き込んだ血管は切断され、人工血管になるそうだ。

7月13日、予定通りに手術が始まった。
朝9:00に手術室に入り、無事に終わったとの連絡を受けICUで会えたのは18:00を過ぎていた。

7/7 AFP29.8ng/mL
7/20AFP8.2ng/mL (正常値)

2万を超える異常値から8.2の正常値まで下がっていた。

結果

AFP値が正常値になる

術後1か月が経ち、摘出したがん細胞を検査したところ...
腫瘍からは、がん細胞は認められなかったと告げられた。

万歳🙌

しばらくの間、のどの嗄声(声帯近くにメスが入ったため)と手足のしびれが続いたが、徐々に味覚異常は消えて食欲も戻っています。
現在開胸手術で傷口がケロイド状になったところの痒みを治す薬を処方されて塗っていますが、それ以外の薬の服用はありません。

感謝

あれから2年の月日が過ぎました。

一緒に闘って下さり、息子を助けて下さった先生方に心から感謝を致します。
再発という恐怖は残っていますが、息子が今も生きていることに感謝しかありません。


今を一生懸命に生きていけばいい...
心からそう願います。

世界中が恐れた感染症と同時に発覚した息子のガンでしたが、面会も許されず何もしてあげられませんでした。抗がん剤の合間に一時帰宅した際には、食べられるものを何でも作って食べさせていました。
二度と食べられないかもしれないと、怖くて悲しくて、泣きながら作っていたのを思い出します。

同じ病気で闘っている全ての人に、少しでも勇気希望持って頂けたら嬉しいです。
難しい病気のため個人差があるかとは思いますが、決して諦めないで下さい。
素晴らしい明日に繋がりますよう心よりお祈り申し上げます。

有難うございました。


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